あきの忘備録

あきのの外部記憶装置

9話「Awaken the power」に込められた願い

 あきのです(*> ᴗ •*)ゞ

 

 

 

 私は渡辺曜ちゃんに生まれたかった。

 

 子供の頃から「みんな」の輪に入っていくのが苦手なタイプの人間でした。

 教室には居場所がなくて、休み時間はいつも図書館で過ごし、自分だけの世界に閉じこもってやり過ごしていました。

 そんな過去を持つ私には9話『Awaken the power』はどうしても、神の目線で俯瞰して見ることができず、ある種の痛みを強いられました。「学校」という息苦しい集団生活の中で窮屈な思いをしてきた人ならご多分に漏れず、4人の一年生の勇気ある行動の数々に、どうしようもなく心を動かされたことでしょう。

 

 

 

 できるかな? できる!

 叫ぶこころが(欲しがる輝き)

 目の前で君に見せるんだ

 

 

 

 7話でそう歌って輝いて見せたAqoursの勇気が、また新たな勇気を呼んで誰かの背中を押す。9話はそんな小さな彼女たちが踏み出した、大きな大きな一歩の輝きを描いたお話でした。

 

 

 前回の記事はノリと勢いだけで突っ走りましたが、今回の記事は冷静にじっくりと書いてみようかと思います。

 

 

 

 

 

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歌いませんか?

いっしょに曲を

お姉ちゃんにおくる曲を作って

この光のなかでもう一度

 8話のラストでルビィは「この光のなかでもう一度」と言って理亞を誘いましたが、「このツリーの下で」とは言ってなかったんですね。

 自分にとっての憧れである「輝き」を見上げている視点からの脱却。ふたりの姉の前で歌うシーンでは、展望台の上から輝きを背にして歌う構図になります。

 

 

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 "100万ドルの夜景"とも称される函館の「輝き」を背景に歌ったふたり。その姿は見事な夜景にも負けない「輝き」として、ふたりの姉の目には映ったことでしょう。

 敢えてクリスマスツリーの光の下で歌わなかったのは、「ラブライブの輝きの円環構造」の象徴であるツリーの電飾の光を受けずとも、ラブライブ!以外の場所で、自らが「輝き」を放つ姿を見せることで自立を表現したかったのかもしれません。

 

クリスマスツリーの電飾は、ツリーの周囲を螺旋状に彩る「輝きの円環構造」そのものを体現した「輝き」だったんですね。そしてその輝きは高みへと高みへと上って行き、クリスマスという短い期間の中で精一杯の「輝き」を放つのです。

「HAKODATE」をメタ的に読み解いてみた話 - あきの忘備録

 

 

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 並木道を彩る電飾の光で浮かび上がる街並み。その坂道の上でひときわ大きな輝きを放つ星こそが11人の「輝き」でした。並木道をクリスマスツリーに見立てて、自分たちが光に照らされるのではなく、その頂点で自分たちが「輝き」そのものになって街並みを照らす光景。多くの観客の心を魅了したことでしょう。

 ふたりだけで放つ輝きではふたり分の心しか照らせなくても、9人なら、11人ならもっとたくさんの人の心を照らす、大きな輝きを生むことができます。

 

クリスマスツリーの電飾は人の手で作られた「輝き」であり、誰かの幸せを願って灯された「光」の象徴でもあります。

「HAKODATE」をメタ的に読み解いてみた話 - あきの忘備録

 

 ふたり分の「輝き」よりも、みんなで手を取り合って生み出した「輝き」の方がたくさんの人を幸せにすることができる。より高い場所で輝いた方が、より遠くまで「輝き」を届けることができる。だからこそルビィたちは、11人でクリスマスツリーの頂点で輝く星になることを思いついたのかもしれません。

 

 

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 星型のフォーメーションは、9個の点を繋いでも生み出すことができない「輝きのカタチ」。Aqoursの9人では生み出せない輝きが、11人の点を繋ぐことで生み出すころができす。9人でできないことが、11人ならばできる。

 ラブライブという大会の枠を超えて、スクールアイドルとしての垣根も超えて、新たな点と点を繋ぐことで広がっていく「輝きの可能性」

 

「ラブライブは大きく広がってゆきます。皆の、スクールアイドルの素晴らしさを、これからも続いてゆく輝きを、多くの人に届けたい!私たちの力を合わせれば、きっとこれからも、ラブライブは大きく広がっていく!」

 劇場版ラブライブ!The School Idol Movieより 高坂穂乃果

 

 まさに劇場版ラブライブの穂乃果たちの願いが現実になったような光景でしたね。8話から続いていた、劇場版ラブライブの物語をなぞらえた流れが美しくここに帰結されましました。しかし、単純に11人の絵を描きたいがためにこの筋書きが用意されたわけではありませんよね。その裏にあった彼女たちの「願い」を振り返ってみたいと思います。 

 

 

☆ 

 

 

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 「結局ステージのミスって、ステージで取り返すしかないんだよね......」

 2期8話「HAKODATE」より 松浦果南

 聖良はAqoursの前では「後悔はしていません」と8話で語っていましたが、当然そんなはずはありません。しかし彼女にはもう、再びステージに立つ機会は残されていませんでした。もう一度「Saint Snowとして」妹と共にステージに立ち、自分たちの輝きを取り戻す機会が。また彼女自身も、「スクールアイドルに憧れ続けた人生」を納得のいくカタチで結びたかったことでしょう。

 

 

One more chance time !

 

 

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 姉・聖良が見つけてくれたというスノードームの話をした時、理亞はステージでのミスへの後悔を口にしました。しかしそれに対してルビィはただ一言、「きれいだね」と。

 

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 姉と共に歩んできた理亞にとっての宝物のような日々に、たった一度の失敗で負い目を感じてしまっていた理亞。彼女のこれまでの日々を肯定してみせたルビィの、そのたった一言に彼女の願いが詰まっていました。姉・聖良と共に過ごしてきた夢のような日々を、どうか悲しいものにして欲しくないという願いが。

 

 

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 自分の姉にもただひとつ、廃校を阻止できなかったことへの心残りがありました。そのことに胸を痛めていたルビィだからこそ、聖良が隠していた本心にも気付くことができたんですね。

 姉妹という誰よりも近い距離のふたりであるがゆえに、お互いに踏み出せない一歩があることもルビィは知っています。だからこそ、第三者である彼女がふたりを巻き込んであげたのでしょう。

 

  

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 かくして11人でのライブを行うことで、「妹に自分の足で、自分だけの道を歩んで欲しい」というふたりの姉の願いのみならず、「もういちどSaint Snowとして歌いたい」という鹿角姉妹の願いをも成就させたサプライズでした。さらに、函館という舞台でライブを行ったことで取り戻せた輝きと、新たに手に入れた輝きがありました。

 

 

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 取り戻したのはスクールアイドルとしての「Saint Snowの輝き」、そして手に入れたのはひとりの女の子としての「理亞の輝き」。

 1期ではステージ上であれほどまでに輝き、強者としての貫禄を見せつけてきた理亞でしたが、1年生組との卑屈な会話の中で「私も学校では......結構そうだから」と打ち明け、普段の意外な一面が明らかになりました。

 

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 昔から恥ずかしがりな性格で、誰ともなかなか話せなかった理亞。クラスメイトともうまく打ち解けられずにいたようでした。

  親しい友人もいなかったであろうその様子からは、姉・聖良が理亞に対して抱いていたもうひとつの心配事が浮き彫りになりました。自分が卒業した後もスクールアイドルとしての活動を続けて欲しい、という願いだけでなく、妹がクラスメイトともうまくいってなかった事もさぞかし心配だったでしょう。もっとも、理亞は姉に心配を掛けまいと内緒にしていたでしょうけれども。

 聖良は妹の学校生活はもちろんのこと、理亞ひとりで共にスクールアイドルとして活動してくれる、新たな仲間を作ることができるのか。そういったことも考えたはずです。

 

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 似た境遇を持つルビィだからこそ見抜けた「もうひとつのわだかまり」でしたが、とは言えこの場に理亞のクラスメイトが来ていたことは、4人にも想定外の出来事でした。

 期せずしてスクールアイドル活動の中で「スクールアイドル以外の自分」をも救われる結果となった理亞でしたが、これは聖良と理亞のこれまでの活動の積み重ねがあったからこそ。

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「私たちも行って良いの?」

「え?」

「それと、今更だけど、ラブライブ予選は......ごめんなさい」

 「いいんだよ。私たちの方こそ、嫌われてるのかなって。会場にも行けずに、ごめん」

「理亞ちゃんや聖良先輩が、みんなのために頑張ってたのは知ってるよ」

「Saint Snowは学校の、私たちの誇りだよ」

  「いいんだよ」「Saint Snowは私たちの誇りだよ」と言ってもらえたことで、その一言でどんなに理亞は救われたことでしょうか。「敬愛している姉と、学校の名前に泥を塗ってしまったのではないか」そう思い、理亞は自分は許されない存在であると考えたはずです。

 しかし嫌われているのではないか、と思い込んでいたのは理亞だけでなく、クラスメイトもまた同じでした。思いがけずして、会場に行けず応援もできなかったことで残ってしまった、クラスメイトの心のつかえまでも解消されることになるとは。

 ルビィが踏み出した小さな一歩がだんだん周りに波及して、やがてたくさんの人を巻き込んだ大きな流れになっていく。「輝き」は広がっていく。

 

  

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「『Saint Snow』のライブです!理亞ちゃん出ます!」

 ルビィの意思が表れた言葉ですよね。開口一番で "Saint Snowのライブ" って言い切っているところに、最初から11人でのライブを行うべくして計画されていたこと、彼女の決意の固さが伺えます。

 Saint Snowとしての面目も含めて、学校のみんなの前で「輝き」を取り戻すためにも、もう一度「Saint Snow」として輝ける舞台が必要だったんですよね。

 

 人見知りなルビィが、自分以外の誰かのために勇気を出して前に出る場面は胸が苦しくなります。私はこのシーンだけでも一生分の涙を使い果たしました。

 

 

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 ラジオで公表したユニット名も「Saint Aqours Snow」でしたね。最初は理亞が緊張のあまり、勢いで言ってしまったから安直でド直球なネーミングなのかと思いましたが。捻りも何もない真っ直ぐな歌詞を書くような子ですから、最初からこのネーミングに決めていたのでしょう。ここでもやはり、最初から11人でのライブを計画していたであろうことが伺えます。

 9人でなければ「Aqours」ではないし、2人でなければ「Saint Snow」ではないし、11人でなければ「Aqours Saint Snow」ではない。この4人が「Aqours」と「Saint Snow」に対して抱いている「あるべきカタチ」の姿が明確になる、そんなシーンでした。

 

 

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 聖良と理亞はホームである函館で、応援してくれていた学校のみんなの前で「Saint Snowとして」ライブを成功させたことで、「Saint Snowとして」の面目躍如を無事に果たすことができました。

そればかりかそこに至る経緯の中で、理亞が学校での友人関係をも前進させることにも繋がったのは「全ての出会いに意味がある」ということなのでしょう。「姉を安心して卒業させてあげたい」という理亞の想いも、図らずして一度は辞めようとまでしたスクールアイドルの活動の中で成就させることができました。

 

  妹を想うダイヤの想いを受けてルビィの願いが生まれ、手を取り合う1年生組の成長を経て、ダイヤや鹿角姉妹だけでなく、学校の人たちも巻き込んで全ての願いが美しく叶えられていく様は、まさしく「みんなで叶える物語」そのものだったと思います。

 

 

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  かくして、「姉として」「妹として」そして「Saint Snowとして」、抱えていた心残りを解消して全ての迷いを振り切れたことで、未来に向けて希望への一歩を踏み出せた鹿角姉妹でした。

 

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 理亞が以前のような表情で、1期7話の聖良と同じように「見ていて」と言い放ち、笑顔で涙を振り切って前を向く姿はあまりに眩しかったです。良かったね、理亞。

 

 

☆ 

 

 

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   そんなふたりの新たな門出を見届けるAqoursですが、未来への一歩を踏み出すふたりを見る鞠莉の表情が気がかりですよね。

 

 

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「Saint Snow」としての心残りが解消されたからこそ、ふたりは前に進めた。しかし、廃校を阻止することが叶わず、心残りが残ってしまった自分たちはどうやって前に進めば良いのだろう。過去を変えることはできない、未来を見るしかない。

 

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  ずっと未来だけを見て進んできた鞠莉にも刻一刻と卒業の日は迫り、「Aqoursとしての自分」の終わりが近付いています。当然のことながら、卒業の先に「スクールアイドルとしての自分たち」の未来はありません。追い続けてきた未来が終わるとき、彼女は何を目指して歩みを進めれば良いのでしょうか。

 

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次回、「シャイニーをさがして」。変えられない過去を払拭するために、彼女たちは「未来」への希望を探します。彼女たちが見つけ出す未来の「輝き」のカタチとは。かけがえのない「想い」を胸に、宝物のような日々を抱き締めて、3年生組は「終わり」の階段へと一歩を踏み出します......

 

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・余談

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私たちはSaint Snowのライブを生で見た経験を誰一人として持っていません。しかし、この瞬間を目撃した彼女たちの感情を知っています。

「HAKODATE」をメタ的に読み解いてみた話 - あきの忘備録

 

 

 

 8話の記事ではこんなことを言っていた私ですが

 

 

 

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えっ・・・

 

 

 

 

 

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完全にこれになりましたよね

 

 

 

 

 

『DROP OUT!?』 がライブで披露される時、私たちはどんな心境で彼女たちを見守ったら良いんですか。

 

 

 

 

 

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こうですか? わかりません

 

 

 

 

 

 

それとも

 

 

 

 

 

 

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 こうですか?

 

 

 

 

なんか知らんけど試聴でクソ泣かされたし、もうどうしたらいいのこれ

 

 

※9話記事第三弾「メタ視点編」も書きたいけど間に合うかな......