あきの忘備録

あきのの外部記憶装置

明日は今日より夢に近いはずだよ

もしかすると、人生は果たされない約束の積み重ねだ。

 

 

 「また、いつか」「また、会いましょう」

 

そう言葉を交わしたまま、この先二度と会うことのない人がどれだけいるだろう。

再開の約束とは、往々にして約束ではない。

それはもはや約束などと呼べるような代物ではなく、ほとんど願い事だ。

それはまるで、当て所ない未来へと向けて投げられた紙飛行機のようだとも思う。

誰もが皆、約束した未来へとたどり着くために、風が吹くことを願っていた。

きっと、ずっと。

 

────風を待っていた。

 

 

 

 

 

μsicforever♪♪♪♪♪♪♪♪♪

 

 

 

 

 

それは途方もない喪失 だった。

私たちの多くが体験したであろう3年前のその喪失は、言ってしまえば「運命的な大恋愛の果ての、壮絶な失恋」のようなものだった。

どれだけ大きく手を振っても、どれだけ大きな声で名前を呼んでも、私たちの全ては私たちだけのもの と言わんばかりに、その輝きの瞬間は"円"の中に閉じ込められた。

 

いよいよ夢のような時間が終わるのだな、ということをアニメではなく現実の体験として実感した瞬間、私たちは「いま」という時間が永遠に続くことを願った。けれど彼女たちは時を進めることを選び、時が巻き戻ることはなかった。

彼女たちは「いま」から切り離されることで永遠になった。

 

 

 

 

 

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声は届きませんでした。

 

μ's FINALは地元の映画館で見届けたので、あの時は彼女たちに向けて直接声援を送ったり、感謝の言葉を叫んだり、名前を呼んだり、できなかったんですよね。

だからでしょうか?よりいっそう彼女たちが「手の届かない"向こう側"に行ってしまった」という喪失感と、「なぜもっと」「早く」「本気で」という後悔の念が、胸の中に黒い影を落としました。

その影を拭い消し去ろうとするかのように、私はラブライブ!シリーズでμ'sの後継にあたる「Aqours」の輝きを追い求めるようになります。

 

 

 

時は流れてAqours 4th Lovelive! 〜Sailing to the Sunshine〜

 

4th直前の記事でもお話ししましたが、私にとって東京ドームはAqours 4thが初めてで。

4th LIVE 2日目、満を持して東京ドームで披露された『HAPPY PARTY TRAIN』。

 

「開いた花の香りから受け取ったよ次の夢を」

 

ついにあの舞台で新たな文脈を汲んで紡がれるこの曲に、万感の思いで聴き入りました。

この歌詞が背負う重圧を、果敢にも一身に受けてきた諏訪ななかを見る。なんという堂々たるセンター力か。

Aqours9人があの時、確かにドームに立つ資格を手にした上でステージに立っていたこと。きっと誰の目にも明らかだったことでしょう。

もちろんドームに立つ資格とは、箱を埋めうる集客力のことを指して言っているのではありません。先駆者たちの威光に霞むことのない輝きと、そしてそこに並び立つ覚悟のこと。自分たちが絶対的に自分たちであるという確信を、その誇りを、Aqoursはステージの上で見事に証明してみせました。

 

「開いた花の香りから受け取ったよ次の夢を」

 

次の夢は確かにそこにあった。

歌詞に歌わされる彼女たちではなく、彼女たちの生き様が物語を証明して夢を現実に変えていく。新たなる物語の担い手たちはついに胸を張って、あの東京ドームで、偉大なる先輩たちに「受け取ったよ」とアンサーを返せたのかもしれません。

 

 

 

 

 

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そして迎えた東京ドーム公演2日目の終演。

彼女たちは──いえ、あの子たちは見事にやってのけました。2日間にも渡って巨大なドームを幸福で包み込み、輝きで満たしてみせたのです。あんなに小さな体で。

2日間で10万人以上もの観客に向けて声を、パフォーマンスを、そのエネルギーを届けるということは肉体的にも精神的にも、そして技術的にも並大抵のことではありません。Aqoursの9人が東京ドームでの公演を行うと知らされて以来、1年以上もの準備期間を経ての、険しい道のりの末に辿り着いた"頂"の境地でした。

 

3年前。偉大な先輩たちが5万人もの観衆から熱狂的な、それはもうほとんど狂騒のような声援を浴びている姿をAqoursは目撃しました。

あまりに巨大な感情でその名を呼ばれ、存在を求められるμ'sを目の当たりにしたあの時。まだ何者でもなかった9人の少女は、本物の絶望と対面しました。

「絶望。」小宮さんははっきりとそう口にしていましたね。

「私たちがこれからどういう事をしていかなければならないのか」という使命を"理解"した逢田さんは、「私たちには無理だ。」そう思ったと話していましたね。*1

 

 

 

Aqours 4th LIVE 2日目。

あの日私には、ある確信がありました。

3rd LIVEで伊波さんは、「みんなが信じてくれたから跳べたんだ」とそう話していました。だからこそ、彼女は私たちを信じてくれているはずである と。

 

アンコールの演目を終え、会場中を渡り歩いて「ありがとう」のやり取りをするAqoursと観客。まだ名残り惜しそうな雰囲気の中、迷いなくセンターステージから全速力で駆け出しメインステージへと上り詰めた伊波杏樹。確信的な後ろ姿を見せて先陣を切る彼女の姿を見た時、直感的に思ったのです。これはメッセージだと。

声援を振り切って肩で風を切るその姿が、私たちがもう一度Aqoursの名を呼ぶことを信じてくれているようにしか見えなかったのです。予定調和ではない、本物のダブルアンコールのために。

 

 

私には確信がありました。

あのままAqoursを帰らせるつもりは毛頭ありませんでしたし、絶対に呼び戻してやるんだという衝動が私を突き動かしました。

あの東京ドームで、他の誰でもなくAqoursの名を呼ぶ、絶対に声を届ける。

あの時はできなかったことが、今ならできる、今しかできない。

「ありがとう」の気持ちは「いま」伝えなければ絶対にだめだ。

 

 

 

疑心暗鬼と戸惑いに包まれていた空気は、やがて膨大な熱量を孕んで膨れ上がっていきます。

そしてついに会場を包み込むAqoursコール。

東京ドームが巨大なひとつの感情で満たされた時、私は勝利を確信しました。

彼女たちがステージに戻って来ずとも、確実にこの想いは舞台裏まで届いている。その時点で私の願いは成就されました──計らずして2年半越しに。

 

 

 

人生には時々びっくりなプレゼントがあるみたいだ。

止めどなく溢れる声援の最中、ステージに眩い白い光が落とされると──そこに姿を現したのは、偉業をなし遂げた9人のヒーローでした。

 

 「こんなにたくさんの人たちが、わたしたちAqoursのことを呼んでくれた」

「やってきてよかったなー!」

 

高らかに、誇らしげに声を上げる伊波さん。

今にして思えばそれはアニメ2期13話のAqoursの姿にも重なるもので、「眩しい世界で呼ぶ声が聞こえた」と歌う『青空Jumping Heart』はラブライブ!決勝のアンコール曲でしね。

あの子たち現実のAqoursにとって、ラブライブ!優勝に相当するような「私たちはやったんだ!」と胸を張れるような、明確な"結果"を手にしたのはあれが初めてだったのかもしれません。アニメ2期のAqoursの背中を追い掛ける3rd LIVE TOURを経て、やっと劇中のAqoursに肩を並べられた瞬間。

後日逢田さんが「初めて報われた気がした」とお話しされていたように、私たちがこれまで見届けてきた表舞台での成功とは裏腹に、想像もつかないような苦悩と葛藤を積み重ねてきた2年半だったのでしょう。

 

「私たちには絶対無理だと思った、恐れ多かった」

 

ダブルアンコールでステージに立った伊波さんは、目に涙を浮かべながらそう打ち明けてくれました。責任や立場のある人が弱さを見せるなんて、それは弱さを乗り越えた人にしかできない、許されないことです。彼女はいつだって奇跡のような光景を私たちに見せた上で、実は私も人間で、私も最初はみんなと同じ"0"だったと打ち明けてくれる。彼女のステージ上での姿が輝かしければ輝かしいほどに、その言葉は私たちの胸を打つ。勇気を与えてくれます。

伊波さんはこれまで幾度となく私たちと約束を交わしてきました。2nd LIVE TOUR千秋楽での、「絶対びっくりさせてやるからな!」「何を言われたって絶対輝いてやるんだからな!」もそうでしたね。

そんな伊波さん率いるAqoursは、またあのドームのステージに戻ってくると約束してくれました。Aqoursの残りの活動期間の中で果たしてそんなことが可能なのか、それはさっぱりわかりません。あれはきっと"紙飛行機"だったのでしょう。であれば、私たちは共に輝きを目指す風であり続けるしかないのです。

 

 

✈︎

 

 

あのダブルアンコールのステージで、伊波さんと、Aqoursの9人がマイクを通さずに私たちに想いを伝えようとしてくれた時。

針の穴に糸を通すような緊張感で5万人が呼吸を止め、ステージの一点にその全ての視線が注がれた瞬間。

この世界で最も美しい静寂が、まるで時が止まったかのように真っ白な刹那が訪れました。まるで時間すらも呼吸を忘れてしまったかのような、真っ白な静寂。

 

 

 

一拍置いて私たちが相見えたのは、初めて鼓膜に届いた真実の声でした。

思っていたよりもはるかに繊細で、それでいて生命力に溢れていて。

紛れもなく心の奥底から溢れ出た剥きだしの感情に、曇りなき本物の輝きを見たのです。

 

 

  

 

 

 

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もしかすると、人生は果たされない約束の積み重ねだ。

 

3年前のあの日、本来であれば果たされないであろう約束を、きっと私たちは交わして しまった。約束は当て所なく宙に浮かんだまま、約束は約束ではなく永遠に願いのままだったかもしれない。そういう運命だったのかもしれない。

けれど風向きは変わった。

新しい時代の風が吹いた。

結果として、私たちは光る風になったのだ。

この先にはもっとすごい、予想だにしないような大きな流れが待ち受けていて、私たちをまだ見ぬ輝きの景色へと誘ってくれる予感がしている。

 

 

 

μ'sが再びステージに立つ日が来る。

それも9人ではなく、場合によっては29人の。

あるいは58人のステージだ。

 

スクールアイドルの輝きが広がっていく、そして繋がっていく。

高坂穂乃果の願いが夢のままで終わることなく、現実のものとなっていく。

SUNNY DAY SONG』がステージ上での体現をもって完成される日が来るかもしれないなどと、あの頃にいったい誰が想像したでしょうか。

 

夢はまだまだ終わらない。

それどころか、"みんなで叶える物語"はもっと大きな夢を欲している。

"みんな"が輝きを追い求める限り、きっと誰に耳にも青春が聞こえる。

 

栄光の瞬間を切り取った永遠ではなく、彼女たちと共に輝きを追い求める「いま」を続けていくことこそが、"μsicforever♪♪♪♪♪♪♪♪♪"のあるべきかたち。それこそが"10人目"としてあるべき姿なんだ、ということを今は自然に感じていて。

"いまが最高!" は"君のこころは輝いてるかい?" に対して "Yes!!" と答えることと同じだとも思う。がむしゃらに輝きを目指して進み続ける彼女たちに負けないように、私自身もまたそうあるしかないのだと。

以前は"10!"と叫ぶことや"Yes!!"と答えることに対して気遅れや葛藤がたくさんあって、胸を張ってそう思えないこともあったけれど。今はもう少し前向きに思えてる。

それはきっと、Aqours 5th LIVEの『Next SPARKLING!!』のステージで、「新しい輝きへと手を伸ばそう」と歌う彼女たちと共に、輝きへと手を伸ばそうとした自分との思いがけない出会いがあったからかもしれない。

ラブライブ!はいつだって、まだ出会ったことのない自分との出会いを与えてくれる。

 

 

 

いつだってラブライブ!は私たちと共にある。

いつだって、どんな時もずっと。

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*1:シブヤノオト Aqours東京ドームへの道より