真っ白なシフォンなびかせて
逢田さん、アルバム「Curtain raise」の発売おめでとうございます。
そしてありがとうございます。
約束された勝利、完全無欠の信頼を寄せていたので全曲試聴は敢えて聴いてません。
いざ、事前情報無しでアルバムレビューに挑戦する怪文書の幕開けです。
- ・1.『Curtain raise』
- ・2.『Mirror Mirror』
- ・3.『for...』
- ・4.『Lotus』
- ・5.『REMAINED』
- ・6.『光と雨』
- ・7.『ME』
- ・8.『FUTURE LINE』
- ・9.Dearly
- ・10.『ステラノヒカリ』
- ・11.『Tiered』
・1.『Curtain raise』
序章、止まっていた世界で刻が動き出す。
暗闇に繋がれていた雲が解き放たれ、大地の鼓動が空を揺らす。
静かな草原に雲間から白い光が差し込み、優しい風に包まれた穏やかな情景が広がる。
凪いだ空気の中、瑞々しい草花がしなやかに揺れる。
プロローグのこの曲はそんな清らかなイメージ。
始まりの予感が感じられて、物語の序章にわくわくする。期待に胸が高鳴ります。強さと美しさがあって、そして清涼感がある。実に逢田さんらしい曲。
逢田梨香子が開く世界の新たなる1ページは、一体どんなものなのでしょうか。2曲目を聴いてみましょう。
・2.『Mirror Mirror』
研ぎ澄まされた歌声は闇を薙ぎ払う刃だ...............
重層的なサウンドが畳み掛けてくる、聴く者を圧倒するような攻撃的なフレーズの数々。振り下ろされる一撃が全部重い、右からも左からも容赦なく降り注ぐパワーワードに翻弄され続けているうちに知らぬ間に曲が終わる。なんだこれは。逢田梨香子は化け物なのでは..............。
アルバム開幕と共にこれまでとは違う歌声を披露してくれる逢田さん、カッコ良さに振り切れていて最高です。こんなにも強い曲調にも負けない、ドラマチックな表現力を見せ付けてくれるの最高過ぎ。言葉の一音一音に淀みなく込められた感情の質量がすごい、アーティストとして覚醒した彼女はこれまでとはまるで別人のようですね。曲のソリッドな質感との共鳴、吹っ切れてる感がすごい。言葉の切れ味が違う。
楽曲の世界観を最大限に生かす歌唱力、満を持してアルバムの2曲目に据えられた逢田梨香子の新境地です。いやほんとすげえなどうなってのこれ?
逢田さんの桁外れの音楽性を確信させるのに、この曲以外になにが必要でしょうか。やはり逢田さんは逢田梨香子の天才だし、逢田梨香子を表現する作曲陣の手腕が怖い。君は誰?
・3.『for...』
畳み掛けるように攻撃力の高い楽曲が続きます。
イントロで即優勝してしまうこの曲ですが、アルバムの流れの中で『Mirror Mirror』の次に来るとまた破壊力が増すようですね。ダークファンタジーな世界観が続きますが、これは黒さえ白に塗り替える布石になっていくのでしょうか...?
・4.『Lotus』
この流れで4曲目にLotusが来るのしんどすぎる、予測可能回避不可能。
この曲は作詞:Jun Ichikawa、Rikako Aidaの連名になっています。歌詞を楽曲に当てはめるにあたって監修がされているはずなのですが、歌詞を読むと句読点の位置に違和感があったり、ところどころ不思議な部分があるように感じます。一言で言ってしまうと、どこか歪な印象がある。それでもその部分をそのままで歌詞にしてくれたのでしょう、制作チームがアーティストとしての逢田さんの表現を大切にしてくれているような気がします。これは愛です。彼女が紡ぎ出した言葉の節々から、それはまるで手仕事の痕跡のような温もりを、愛おしい手触りを感じるのです。
私はこの曲の歌詞に登場する「黒」と「白」を、感情や人格の善悪のようなものを表現したものではないと解釈しています。黒歴史という言葉がありますが、「黒」と「白」は「過去」と「現在・未来」の隠喩ではないかと思っています。逢田さんがこの曲で表現したかったことはきっと、時間の有限性、永遠との対比、所業無常。それらのキーワードに繋がるように思いますし、逢田さんってそういう人なんじゃないかなと私は捉えています。
前回の記事でも少し触れましたが、やっぱり「永遠の中にある、切なさを」という詞の言語感覚が、そのセンスが異常。畑亜貴が降りてきて書いたのではないかとすら疑う、天才の所業でしょう。
『Lotus』はもう既に私にとって大切な曲です。こんなに素晴らしい曲を生み出してくれた逢田梨香子さん、もっと好きになってしまった。
・5.『REMAINED』
ざらっとした肌触りのイントロ。寄せては返す波のようなメロディー展開。
砂のように思い出が海にさらわれて、さらさらと解けていくような曲調。
楽曲と歌詞とが織りなす切ない世界観を、逢田さんがしっとりと歌い上げます。彼女の声質、こういう曲調がよく合いますね。悲しげな響きの中でも悲壮さより、遠ざかる過去を眼差すような愛の深さを感じるのが、なんとも逢田さんらしいというか。
音の隙間を繊細なタッチで埋めていく歌声は、語尾が消えた後も余韻が尾を引くような静かなエモーショナルさに溢れていて、それはもうたいへんしんどい。
『Lotus』からの流れで『REMAINED』に繋がるのは情緒が迷子になりますね、逢田梨香子に悲恋を歌わせると大変なことになることが実証されました。才覚をこっちのベクトルに全振りすると、こんなにも突き抜けてしまうのですね。リピート続けるのがしんどいので次行きます。
・6.『光と雨』
4曲目のREMAINEDとはうってかわり、軽快なイントロから軽いタッチでさらっと歌い始める逢田さん。抜群のリズム感覚をお持ちの彼女には、こんなお洒落な曲調も歌いこなしてしまえるのですね。
ちょっと切ない歌詞ですが前向きで、なんとも逢田さんらしい曲になってますね。しかしファルセットこんな風に自在に扱える方でしたっけ。またお歌が上手になられましたね.......まじで............。“もしまた逢えたとしても 私はこの道を選ぶ” が、いかにもらしくてぐっと来てしまいます。聴き終えるとほんのりと爽やかな余韻が残るところが好きです、通り雨のあとの澄んだ空気みたいで。
・7.『ME』
ミドルテンポに小気味よく乗るAメロの歌声、気持ち良いですね。わたし的、逢田梨香子の真骨頂 is これです。中音を気持ちよく聴かせてくれるのも彼女の持ち味だと思っていて、好きなんですよね。リズムにアクセントを乗せる抜群のセンスがあるからこそ、これぐらいの音域の楽曲でも歌声がよく映える。
好きだなあこの曲、日常のリズムにそっと寄り添ってくれるような温かさがあって。じんわりと泣きそうになる、ほんのりと世界が明るく色付く。優しい気持ちになれる。
日常に疲れたときに癒しと勇気を与えてくれそうな、静かな決意表明と踏み出す一歩を肯定してくれるような。等身大の自分を受け入れてくれるようで、背中を押してもらえたような気持ちになります。好きだな、この曲。逢田さんが歌うからこそ、良い。
・8.『FUTURE LINE』
この曲、バースデーイベントのステージのラストで歌われた光景が記憶に焼き付いてる。輝きが解き放たれる瞬間を確かに見た。緊張から解放されて、歌うことの楽しさに身を委ねてポジティブなパワーを爆発させたあのひと時を。会場に降り注ぐ幸福のシャワーをこの身に浴びながら、ああ、こんな逢田さんがずっと見たかった。と涙が溢れたことを覚えている。笑顔で楽しそうに歌う逢田さんは、本当に良い。
アルバムでは後半に位置付けられての登場ですが、『ME』からの流れで上げていくポジションに来るとまた違って良いですね。
・9.Dearly
浮遊感のあるイントロから始まって、安定した低音を効かせつつアップダウンの大きいクセのあるメロディを気持ちよく聴かせてくれる歌声。アクセントの質感が小気味よくて歌がうまい!となります、さらっとリズミカルに歌い上げていますが難しそうな曲調です。逢田梨香子の歌がうまい。清涼感に溢れた楽曲にぴったりな歌声ですね。
「あなた」へのメッセージを歌うストレートな歌詞ですから、ライブで披露されたらまた違った熱を持った曲になるのでしょうね。しかしこの曲もまた逢田さんらしい歌詞で、ほんとに制作陣から愛されて生まれてきた楽曲なのだろうなと思います。歌詞にちゃんと「逢」の漢字があてがわれてる所とか、いいなぁ。
・10.『ステラノヒカリ』
ドリーミーなメロディーで始まったこの曲、なんだかファンタジーな雰囲気でかわいらしいですね。アップテンポな曲調をキラキラして歌う梨香子ちゃんがかわいい。なんだかちょっぴりあざといですが、こういうのができるのも梨香子ちゃんの持ち味ですね。
なんか「逢田さん」って感じじゃないので「梨香子ちゃん」と呼んでみましたが自分が気持ち悪くてだめですね。こういうポップな曲、女の子が好きそー!って感じ。女子向けなので私はお呼びじゃない感じですが、ライブで楽しそうにこの曲歌われたらみんなにっこり幸せになっちゃいますね。はあ、要するに完敗です。かわいいわ。
・11.『Tiered』
やなぎなぎプロデュースですから、尋常ではない期待をしていた曲だったのですが...............。
結果は 意識が戻って来ない。言葉を失った。
大好きな人にこんな曲書いてもらえたら、そりゃ泣きますよ。私ですら泣いてしまった、桁外れに尊い。まじでだめだこれ、尊さで消えそう。形を失う。
一体どんな想いでやなぎさんがこの曲を描いて生み出したのか、そしてその想いを逢田さんがどんな気持ちで受け取り、そして歌い紡いだのか。想像するだけで尊さに押し潰されそう。
それは触れることが許されないシルクのような純白。ささくれたこの手で触れてしまえば、立ち所にほつれてしまうかもしれない。この曲にはまるで、小さな女の子が誰にも見せずに大切にしてきた宝石のような輝きがある。誰にも教えない秘密の美しさよ。
幼い頃の憧れ。繊細で真っ白なドレスはきっと、女の子にとっての特別でしょう。
ティアードドレスは、連なり逢うティアードを重ねて縫い上げられる。ギャザーは想いを手繰り寄せるように寄せられ、ひと針ひと針、紡ぎ合わせられていく。ひと針ひと針、想いを綴じ込めるように。縫い上げればやがてティアードは完成してしまう。透けるシフォンで優しく調和された光は、止め処なく向こう側に届いてしまうかもしれない。
やなぎさんが逢田さんのために縫い上げた物語は、楽曲だけ聴けば紛れもなくやなぎなぎの音楽。でありながら、逢田さんが物語を歌い紡ぐと、逢田梨香子の音楽として新たな世界に生まれ変わる。歌声の端々からやなぎさんの音楽への尊敬が感じ取れる、そうして生まれた響きが彼女の音楽性を新たなる境地へと導いたような。こんな声色で歌う逢田さんがいるのは、ひとえにそこに愛が込められているからに他ならないでしょう。生地の織りを傷つけないようにそっと、丁寧に針を通すように歌われていると思いませんか。
楽曲それ自体から、やなぎさんと逢田さんの関係性に物語のようなものすら見出してしまうのは妄想が過ぎるかもしれませんね。それでも、この曲が彼女が敬愛するやなぎさんから贈られたものであることは事実で。ふたりを繋ぐ楽曲として生まれた『Tiered』に、何らかのメッセージを感じずにはいられないというか。想いと想いがギャザーのように寄せられて、そうして縫い合わせられて生まれたこの曲。まるで美しい純白のドレスのような楽曲だと思えてならないのです。
ドレスを縫うには、仮縫いという行程があります。
人体を模したボディに裁断した仮の布を着せ付けて、シルエットの出来栄えをチェックして調整する。プロトタイプの試作品を作ります。
楽曲の制作によく似ていると思いませんか?『Tiered』はやなぎさんがパターンを引き、布を裁断し、仮縫いをして、デザインのベースを作りました。楽曲の仮歌は彼女のものであったと逢田さんは明かしていましたね。そして逢田さんが実際に縫い合わせて完成させた『Tiered』というドレス。大切な想いを込めて丁寧に作られたそれは、ずっと手元に置いておきたいような、私にとっても特別な楽曲になる気がしています。
逢田さん、素敵なアルバムをありがとうございます。
全部の曲を大切に、いっぱい聴きます。